政治

【Article】中岡まり:基層ガバナンスにおける共産党の存在―党群服務中心からみる

2026年9月に広州を訪れ、社会治安総合治理総合治中心(以下、総治中心と略す)、社区居民委員会、党群服務中心などを観察することができた。基層ガバナンスにおいては社区の党組織の書記が総治中心とグリッド化服務管理中心の主任を務め、総治中心は統一的なプラットフォームとなり、基層住民のワンストップサービスとして機能するとされている。しかし、実際に区レベルの総治中心と社区レベルの総治中心を訪れてみると、透明な自動ドアは閉じていて、一般市民が入っていける雰囲気ではない。これに対して、党群服務中心はドアが開いていて、入りやすい雰囲気があり、実際に私たちもいくつかには入っていくことができ、より市民に開かれたサービス拠点と思われた。基層ガバナンスの中で党の指導する街道社区・居民委員会と共に党組織を基盤とする党群服務中心が存在感を高めることは何を意味するのか。

2026年9月に広州を訪れ、社会治安総合治理総合治中心(以下、総治中心と略す)、社区居民委員会、党群服務中心などを観察することができた。基層ガバナンスにおいては社区の党組織の書記が総治中心とグリッド化服務管理中心の主任を務め、総治中心は統一的なプラットフォームとなり、基層住民のワンストップサービスとして機能するとされている。しかし、実際に区レベルの総治中心と社区レベルの総治中心を訪れてみると、透明な自動ドアは閉じていて、一般市民が入っていける雰囲気ではない。これに対して、党群服務中心はドアが開いていて、入りやすい雰囲気があり、実際に私たちもいくつかには入っていくことができ、より市民に開かれたサービス拠点と思われた。基層ガバナンスの中で党の指導する街道社区・居民委員会と共に党組織を基盤とする党群服務中心が存在感を高めることは何を意味するのか。

本稿では、党群服務中心の設立を、基層ガバナンスにおいて周縁化していた党組織が行政から主導権を握っていくことととらえる。そこで、基層ガバナンスにおいて指令系統が複雑化していること、基層ガバナンスにおいて周縁化していた党組織が再建を企図したこと、基層ガバナンスにおいて党群服務中心が設立され、行政・生活サービスを包摂し、活躍することを期待されていることを説明する。最後に、運用の課題から基層ガバナンスにおいて党が指導的な地位を維持するために大衆の満足するサービスを提供し続けることの課題と限界について考察する。

1.複雑化する基層ガバナンス

習近平政権は社会の安定を最重要課題の一つとし、基層のガバナンスに関して多くの施策を行っている。その結果、今日の中国の基層ガバナンスの制度には複数の指導系統が混在する形になり、複雑化している (中岡、2026)。

1980年代、「単位社会」の崩壊により、国家とのつながりを失った人々は原子化していった。その中で1986年に民政部が「社区(コミュニティ)」の概念を都市管理に導入し、都市においてコミュニティサービスを展開することを提起した(向・華、2019,108)。翌1987年には社区サービスが正式に始動したことが示された(夏、2019,24)。根底にある目的は社会の安定であり、社区に対する施策の核心にはサービスの提供があった。1991年からは社区にかんする施策は社区建設のフェーズに入る。民政部に基層政権建設司が設置され、民政部の主管の下に社区工作の任務の重心はサービス提供から社区政権建設へと移り、1990年代末には社区建設及び社区管理が社区工作の主旋律となっていく。2000年からは民政部とその指導下にある街道弁事処と居民委員会による社区建設が本格化する。これら社区管理組織においては党委員会(以下、党委と略す)または工作委員会が依然として指導の核心であるとされた。

2012年からの習近平政権下においては社区治理(ガバナンス)のフェーズに入る。2013年の第18期三中全会では社会治理体制の革新が打ち出され、グリッド化管理の活用と基層総合サービス管理プラットフォームの健全化、社会治安総合治理の強化も指示された。当時の指令系統は、市政府―街道弁事処-社区居民委員会という政府(行政)系統と市党委-市党委街道工作委員会-社区居民委員会という党系統の二本が並立していた。

2016年には社会治安のガバナンスを強化し、党の執政党としての地位を強化するために「社会治安総合治理総治中心の建設と管理規範」が発表され、省、市、県、郷鎮(街道)、村(社区)の5レベルにおいて総治中心を建設、管理するよう求められた。これにより社区ガバナンスに「治安」というミッションが加わることになった。

2019年に「中国共産党政法工作条例」により総治中心が政法委員会の命令系統下に置かれることになったことから、社区ガバナンスには従来の政府(行政)系統と党委系統の二つの「条」の指令系統に加えて、市党委政法委員会-街道政法委員という指令系統が加わることになった。

2023年に社区ガバナンスは既存のシステムから大きく軌道を変えることになる。国家機構改革により、党中央委員会社会工作部が新設され、民政部が担っていた基層ガバナンスと基層政権建設がこれに移管されることになった。これにより、街道弁事処―社区居民委員会のラインに市社会工作部系という四つ目の「条」がかかわることになった。社会工作部の基層にかかわる工作の柱は「党の建設が導く基層ガバナンスと基層政権建設」と「ボランティアサービスと社会工作人材の隊伍の建設」とされる(中共中央社会工作部)。党委系統や政法委員会系統が政府・行政に組み込まれた指令系統としてかかわってきたのとは異なり、基層党組織の建設により基層ガバナンスの安定を図ろうとする新しいアプローチを社会工作部系統は取ることになった。

基層ガバナンスの主題がサービスの提供から社区政権建設、社区管理、社区治理、社区の治安維持へと変遷する中で、指令系統が増え続け、基層ガバナンスのシステムは重層化し複雑化している。

2.基層ガバナンスにおける党組織の転換-周縁化した党組織から主導権掌握へ

基層ガバナンスと基層政権建設が民政部から党社会工作部へ移管されたことが示すように、基層において党は主導権を顕在化させようとしている。これが実体として示されている例の一つが党群服務中心である。

前項では単位社会が崩壊し社区社会へと移行する中で、複数の指導系統が並行し複雑化したことを紹介した。これを基層ガバナンスの中での党が占める地位および党建設の視点からみると、単位社会から社区社会への移行とその後の展開は大衆の中で党組織の存在が周縁化していく過程でもあった(徐、2025)。伝統的な都市基層党建モデルは、常に外部の空間条件に依拠して党の基層組織を構築してきた。すなわち、単位、社区、地域といった社会空間に依拠して単位党建、社区党建、地域化党建を行うほかなく、党建設は社会に体系的に埋め込まれてきた。党群服務中心の存在はこの状況を変え、党県のための空間を自律的に構築するものと王は指摘している(王、2026,68)。

改革開放以前に長く続いた単位社会においては、党は資源配分・公共サービス供給とそれをつうじての動員を実現し、地域社会において中核であり主導する存在であった。改革開放後の単位社会の崩壊は基層における党組織の存在を希薄化し、周縁化するものであった。1982年憲法で居民委員会が自治組織とされ、民政部が「社区サービス」を提起して以来、大衆への福利厚生の供給は「政府が主導し、社会が協働し、市場が補う」形へ転換し、街道弁事処と居民委員会が主な担い手となっていく。また、この中で基層における党組織の存在は周縁化していくことになる。2000年代に入り、「全国の都市社区建設を進めることに関する意見」により「党委員会が統合し、行政が主導し、社会が協働する」ガバナンス体系が目指されるようになった。そこで居民委員会の自治的な性質が強化され、コミュニティサービスの場にはサービスを提供する企業や社会福祉組織など多様な主体が参画するようになった。多くの都市では「コミュニティワークステーション(社区工作站)」の設立を模索し、これに行政事務を受託させ、居民委員会の行政負担を軽減し、自治機能を活性化させた(徐、2025,27)。社区ガバナンスの「行政化」、「居民委員会とコミュニティワークステーションの業務分離」、「政社分離」は党の地域社会での役割発揮に対しては脅威となった。コミュニティワークステーションは社区の日常業務を中心とするため、居民委員会及び党委から委託される工作は重視されず、党委が社区で果たす役割は周縁化されていく(徐、2025,42)。

2012年の党18回大会以降、社区工作の主題が社区管理から社区治理(ガバナンス)へと転じるに従い、党の基層における作用の重要性が顕在化してきた。2017年6月に党中央と国務院が発した「中共中央および国務院による都市農村社区統治の強化及び改善に関する意見」では、都市と農村での社区ガバナンスの強化の基本原則として第一に党の指導の強化と都市部と農村における基層党組織の発展を求め、それにより指導的役割を発揮することを挙げている。これに先立ち、同年3月に基層党組織における党建設の標準化推進に関する会議が開催され、党建設の標準化が提唱された。この中では継続的に規定された活動を行うため、村や社区などそれぞれのレベルで固定の活動場所を設置することが勧められた(光明日報、2017年4月4日)。党建設の標準化は2016年初頭より検討されており、これ以降、社区服務中心は「社区党群服務中心」へと看板を掛け変え、改称されていった。基層における党組織の標準化・再建と、社区管理から社区ガバナンスへの転換に社区における党組織の主導権確保という使命が重なり、既存の居民委員会が担い手となっている社区服務中心(国務院、2011)を基層党建設の拠点と行政機能を兼ね備えた社区党群服務中心へと転換させたのである。社区服務中心は従来から党の指導下に置かれるとされていたが、それでもなお、形式上は行政系統に属するものであった。しかし、党群服務中心への転換は、党の指導と党が主体として全面的に打ち出されるものであり、党組織が行政組織とその業務を事実上吸収・従属化したともいえる。

3.党群服務中心-党組織による行政サービス機能の包摂

党群服務中心の建設は2019年に国務院弁公庁が発出した「都市基層における党建設活動の強化・改善に関する意見」において、提起されている。ここでは都市の基層党組織は党のあらゆる活動と戦闘力の基盤であるとして、人々のよりよい生活へのニーズに応え、党の都市活動レベルを継続的に向上させるための施策の重要性を指摘している。そして党組織の基層ガバナンス工作の指導レベル向上のための施策の一つとして、党群服務中心の建設を求めている。

党群服務中心の建設にあたり求められている要求は高い。立地特性、人口特製、サービス範囲などの要素を考慮し、党建設、行政事務、社会サービスなどの様々なリソースを統合して、構造がしっかりしていて、完全に機能し、相互に連携した党群服務中心を構築し、党員と大衆のための共通空間を創出するとしている。

党員向けの説明では、党群服務中心は基層の党建設を支える「物質的」基盤であり、党員と大衆に奉仕する主要なプラットフォームと位置付けられている(共産党員微信、2024)。「党の事務や政策に関する相談、党関連事項の処理、党建設の理論や知識の普及、党員、基層幹部、党活動家、周辺住民への政治生活サービスの提供を行う場」とされており、党員の活動を中心に支える党組織のためのプラットフォームとしての性格が主であることが分かる。その上で、党と大衆へのサービスを体現する総合的なサービス拠点としての役割もあるとしている。実際のニーズに基づいて直接的な行政サービスや人材サービスなどの機能も追加される。

党群服務中心は「物質的」基盤となることが求められており、何らかの物理的空間を占めるよう求められているが、土地、建物、施設、人員などの確保を新たに行うことは容易ではない。運営費用面では、地域運営資金、党建設事業資金、大衆サービス特別資金、サービス施設及び地域情報化建設資金を実施するとしているが(中共中央弁公庁2019)、これも困難を伴う。基層における党建設が中心となるプラットフォームでありながら、大衆へのサービスも業務の柱となっており、運営資金および人材確保が盤石ではないにもかかわらず、上級からの要求は高い水準を求められる。その結果、複数の地域で事業内容が重複している既存の組織を転用して対応するようになった。

①行政ベースの組織を転用する

深圳市では全市の社区で2013年から社区服務中心を立ち上げていた。ここでは4名のソーシャルワーカー(社会工作者)と2名の行政アシスタント(行政助理)がサービスチームを構成し、「自治組織と社会組織の結合」という運営メカニズムを形成した。2016年に社区服務中心は標準化と職能のアップグレードを実現し、統一して社区党群服務中心へと改称された。このモデルが全国に普及していったという(徐、2025,14)。

②党建組織を拡張する

もう一つのパターンは上海に見られるもので、党委組織部による既存の党員服務中心の機能を拡充し大衆へのサービスも追加し、党群服務中心へと転換させていったものである(尹・尹、2024,99-102)。上海では単位社会の崩壊により多くの党員が社区へと分散したことに対応するため、2001年に初の社区党員服務中心を設立した。2001年6月に上海市党委組織部党員電化教育中心および市党委組織部党員服務中心が運営を開始した。区レベルでも党員服務中心も稼働し、2003年には郷鎮党員服務中心が設立された。2007年に当時上海市党委書記であった習近平は静安区の党員服務中心と企業ビル内の党員服務拠点を訪れ、「さらに抽出・昇華に値する」と評している。2009年11月に上海市党委組織部党員電化教育中心と市党委組織部党員服務中心は正式に合併し、上海市党委組織部党員電化教育中心(党員服務中心)となった。2014年に上海市党委は「街道体制改革の進化に関する実施意見」において社区党員服務中心を社区党建服務中心へと改称し、街道所属の科級事業単位とすることとした。2015年7月に上海市党委組織部党員電化教育中心(党員服務中心)は上海市党建服務中心へ改称された。2019年には中共中央弁公庁の「都市基層における党の建設工作の強化・改善に関する意見」を受け、党建服務中心を党群服務中心へと改称した。上海においては各種の住民サービス中心も党群服務中心の体系に統合され、党群服務中心のサービス内容は党建サービス、行政サービス、生活サービスなどの多方面を網羅するようになった。名称でも党が前面に出ることで、党が人民に奉仕することを具現化、可視化しアピールすることに貢献しているという(尹・尹、2024,102)。上海の事例で指摘しておきたいのは、基層ガバナンスにおいて主導的な役割を果たす党群服務中心の基盤が党委の中でも組織部系統の組織にあったことである。特に地域住民の公共の事務の処理は居民委員会組織法(第10条)に定められた居民委員会の職責である。居民委員会は党の指導下にあり基層党組織と兼任することは可能だが、その際にも形式上は「居民委員会」として公共の事務処理にあたるのが然るべきであろう。党組織部が設立した組織が事業単位となり、行政・生活サービスまで行うのは、法律の裏付けを軽視した党による行政領域への干渉が進んでいることを示している。

4.党群服務中心の実際の運用

本項では党群服務中心の実際の運営形式を紹介する。

(1)上海の先進的な事例

上海での都市のランドマークになるような独立型の大型の党群服務中心が多く設置されている。上海X区の市・区・街鎮の三級党群服務中心拠点体系では独立型空間形態のものが68.4%を占める(王、2025,69)。なかでも有名なものとして普陀区万里街道の「万有引力新業態・新就業群体党群服務中心」、黄浦区南京東路街道の「蘇河之眸党群服務中心」などがある。「万有引力新業態・新就業群体党群服務中心」は敷地面積約3900平米で、食堂、バスケットボールコート、読書室、バッテリー交換ステーション、無人スーパーなど21の機能エリアを一体化し、2022年の完成以来、延べ28万人にサービスを提供している。ここでは宅配員やフードデリバリー配達員などの出稼ぎ労働者もサービスの対象としているのが特徴である。安価な食事が提供され、充電・バッテリー交換もでき、外来人口が仕事に活かせる簡単な上海語の授業を受けることもできる。通常は配達員を忌避する施設も多いが、党群服務中心は開放的な場所で受け入れられていると感じられる、と配達員に好評である。出稼ぎ労働者には流動党員となった者もおり、彼らの取り込みにも成功している(巨雲鵬、2024)。「蘇河之眸党群服務中心」は日中デイケア、シニアケアホーム、図書館、ジム、コミュニティ食堂、社区健康服務中心、屋上庭園などがあり、全年齢を対象としている人気の公共空間となっている(唐、2023)。上海のいくつかの党群服務中心がYouTubeでも紹介されているが、訪れる人は清潔で安価で寛げる食堂やカフェ、無料のワークスペースとして紹介しており、党の施設という意識は希薄である。

(2)広州市の一般的な事例

2026年9月に筆者が広州市内で見たいくつかの党群服務中心は上海の例とは異なり、間口の狭い小規模なもので、独立したものもあれば党政機関や居民委員会などの複数の機関と併設されているものがあった。

①観光地のサービスステーション:荔湾区(多宝街道)永慶坊党群服務駅站/多宝街道永慶坊新時代文明実践站

永慶坊は、広州市荔湾区恩寧路一帯にある「歴史街区の再生プロジェクト」で、嶺南文化・西関建築・粤劇(広東オペラ)・ブルース・リー旧居などを核にした文化観光エリアである。都市化で失われつつあった伝統街区を「微改造(micro-renovation)」という手法で再生し、伝統的街並みを文化施設・体験工房・カフェ・ショップと融合させた、広州を代表する都市再生モデルとして評価されている。永慶坊党群服務駅站は多宝街道永慶坊新時代文明実践站を併設し、永慶坊の一角の人通りの多いところにあった。他にも港澳人士多宝街道服務点、社区就業駅站、羊城技能加油站、街道労働関係総合服務站が併設されていた。平日の夕方にこの服務ステーションにいたのは若いスタッフ一人で、実務を行っているようには見受けられず形式的な印象を受けた。建物は2階建てで1階には党建設に関する展示、市民教育室、人々へのサービスの提供、母子休憩室が設けられていた。人々へのサービスとしては、飲料水・充電・無料Wi-Fiの提供、救護、傘の貸し出し、遺失物捜索などが行われていた。1階に置かれていたパンフレットは失業者や高校卒業生に対する就業斡旋サービスが多く、ここでの中心的な業務は就職関連情報の提供のようだ。2階には文化活動室、科学普及宣伝室、健康活動室など党員のための活動スペースが設けられていた。2階へあがろうとすると、止められたので、2階以上は党員限定のスペースと思われる。併設されている多宝街道永慶坊新時代文明実践站は地域の人々に対する教育・宣伝を行い、心を寄せてサービスを提供するものとされている。社区党組織の指導を受けて社区居民委員会主任が責任者を務め、社区の専業スタッフが管理員を務めるとされ、日常の管理も社区居民委員会が責任を負う。党群服務駅站も併設された組織も党の名称を冠するが、実質的には居民委員会が責任を負って管理するものに見えた。

図1 永慶坊党群服務駅站—観光地にあり、入りやすい雰囲気
図1 永慶坊党群服務駅站—観光地にあり、入りやすい雰囲気

②多くの党政機関と併設:越秀区華楽街党群服務中心

越秀区華楽街は、広州中心部に位置する生活密着型の街区で、商業・住宅・行政サービスが混在する都市型社区である。狭い2車線の道路に居住区と商店街が並ぶ中に独立したビルがあり、公安と並んで多くの機関が併設されていた。党群服務中心は、党の華楽街工作委員会、区人民政府華楽街街道弁事処、紀律検査工作委、街道監察組、街道人民武装部、街道総治中心、街道便民服務中心と併設されていた。これらの機関の入り口は公安の入り口の隣に一つだけあり、警備員こそいないものの、一般市民が予約なしで入っていけない閉鎖的な場所であった。

図2 華楽街党群服務中心-多くの党政機関と同じ建物に設置されている
図2 華楽街党群服務中心-多くの党政機関と同じ建物に設置されている

③居民委員会と併設:越秀区六榕街旧南海県社区党群服務中心

南海県は清末〜民国期にかけて広州府の管轄下にあった歴史的行政区画で、旧南海県社区は民国期の建物が残り、これを永慶坊同様に「微改造」したカフェなどが多いメインストリートである恵吉西路と恵吉東路が中心にある。そこから外れるとスーパーや居住区が混在する地区となっている。恵吉西路には旧南海県社区党群服務中心があると表示されているが、実際には「旧南海県社区服務中心」と書かれた建物がある。ここでは居民委員会が作成した「便民功能服務指南手冊」が配布されていて、社区でのサービスに関しては居民委員会が責任を負っていることが分かる。手冊で示されている党群服務站でのサービス項目は党建、民政、衛生、総合治理、環境、流動人口管理、退職者対応、労働就業、文教、ボランティア、監察と多岐にわたる。本来はこの社区服務中心に社区党群服務中心が入るのだろうが、恵吉西路27号の居民委員会のある建物に党群服務中心も設置されている(何、2022)。満州窓と呼ばれる嶺南地域に特徴的なステンドグラスで装飾された扉は開かれており、住民であればいつでも入っていける開放的な場所と言える。

図3 旧南海県社区党群服務中心が置かれている社区居民委員会—中にカウンターがあり、常に職員が4名ほど対応している
図3 旧南海県社区党群服務中心が置かれている社区居民委員会—中にカウンターがあり、常に職員が4名ほど対応している

5.党群服務中心に設置と運用に見る課題と党の支配-どこまでサービスし続けることができるのか

基層ガバナンスは複数の指令系統が並走し、現場はこれに対応すべく奔走している。中国人の話を聞くと、こうした基層のグリッドや居民委員会の対応は迅速で的確で概ね満足しているという意見が多い。しかし人々を継続して満足させるにはコストとリスクが伴う。

この観点から、党群服務中心の運用においては課題も多い。

一つ目は運用・活動においてサービスを重視するあまり、ガバナンスが軽視されていることである(原・劉、2026,70-72)。多くの党群服務中心が地域の「利便サービス一体化ホール」を中核とするサービス媒体になっており、ガバナンス機能が発揮されていない。多くのサービスが娯楽志向であり、住民はサービスを享受する側として受動的にしか関わりを持たず、自主的に基層ガバナンスに参加しようとする力量が涵養されていない。

二つ目は運用資金の不足である(黄、2023,43)。資金源は党建経費と各種の特別資金が中心で、社会資金の開発・活用が不足している。地方政府の財政支出能力の要因から制約を受けることも多い。ある市では資金が確保できず建設が遅れ、地元の工商銀行に寄付を受けて建設が完了した(黄、2023,43)。上海市では必要な面積を確保することができず、いくつかの拠点に分けて設置するしかない場合もある(王、2025,71)。基層ガバナンスにおける資金不足の原因は、そもそもサービス提供を主とする工作が収益創出の仕組みを備えていないためである。その中で継続的に市民の要求に応え続けるには限界があるのではないか。

三つ目は人材不足と正当な評価がなされないことである。ある市での調査では担当する職員の流動性が高く常に職員数が不足しているため、質の高いサービス活動を提供することができず、費用を要さない小規模な文化娯楽活動しかできない状況が生じている(黄、2023,44)。郷鎮レベルにおいては評価基準が単一であるため創造性のある仕事が行われず、インセンティブ制度も整備されていないため職員の積極性を削いでいる。また専門人材が不足しているにもかかわらず現場のニーズにマッチしない採用活動が行われることもある(候、2025,182-183)。

基層党組織の発展を基盤に行政サービスや生活サービスも提供する党群服務中心を設立したことにより、基層ガバナンスにおいて党は前面に出て主導的な地位を占めようとしている。そこでは党が中心となってカバーする領域を拡大し、社会の安定を維持し、大衆を満足させるために手厚く応え続けることが求められる。しかし、利益創出のメカニズムを備えていないなかで、党によるサービスの提供はどこまで継続可能なのか、充分な対応を得られなくなった時、人々は党を支持するのか、今後も注意深く観察する必要がある。

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